美容室の物件が一等地で決まらない理由|銀座100坪の出店事例
美容室の物件探しで「銀座に出したい」「表参道に出したい」と考えたとき、最初にぶつかるのは資金の問題だと思われがちです。
ところが、実際にいちばん多いのはそもそも一等地のテナント物件を紹介してもらえないという壁です。
銀座で100坪のサロンを構える髪質改善専門店「sinsia」も、はじめは同じ壁の前に立っていました。どうやって越えたのか。美容室のテナント・居抜き物件探しという視点で追いかけます。
この記事でわかること
- 一等地の物件が紹介されない、本当の理由
- 物件を「取れる人」と「逃す人」を分けるもの
- 43坪から100坪へ。増床という選択肢
- 物件・資金・内装をバラバラに進めないための考え方
- 出店資金の組み立て方には、どんな選択肢があるか
そもそも、なぜ紹介してもらえないのか
銀座や表参道といった一等地のテナントは、募集情報が表に出る前に決まってしまうことが珍しくありません。
貸主が見ているのは「払い続けられるか」だけ
理由はシンプルです。貸主がいちばん気にしているのは「この人は家賃を払い続けてくれるか」。
判断材料になるのは、決算書と事業の実績です。
つまり、独立したばかりの方や設立間もない会社は、内見を申し込む前の段階でふるいにかけられているのです。
妥協した物件では、事業計画が成り立たない
sinsiaが移転先を探していたときも、状況は同じでした。
紹介されるのは、築年数の古いビルや路地裏の区画ばかり。営業はできるかもしれません。でも、お店の世界観をお客様に伝えられる空間ではありませんでした。
髪質改善のように客単価も滞在時間も長い業態では、内装や動線がそのまま体験の質になります。妥協した物件では、そもそも事業計画が成り立たない。
だから決まらない。この状態が続いていました。
一等地で候補が出てこない、4つの理由
- 募集前に水面下で決まっていて、そもそも情報が届かない
- 貸主が求める与信(事業年数・決算内容・保証)に届かない
- 美容業は、給排水や電気容量の条件が合う区画がそもそも少ない
- スケルトン(内装がない状態)だと工事費が読めず、判断に時間がかかる
紹介の翌日に内見。動けるかどうかが勝負を分ける
転機は、同業の経営者との食事の席でした。
物件探しの話をしたところ、その場で紹介を受けます。翌日には担当者と面談。同じ日のうちに現地を確認しました。
空き区画の情報は、出てから他社に渡るまでの時間がとても短いものです。一等地であればなおさら。
「紹介を受けてから何日で内見に立てるか」が、物件を取れるかどうかを左右します。
スケルトンは、不安であり自由でもある
このとき案内されたのが、現在の店舗が入る銀座のビルでした。
引き渡しはスケルトン。内装が何もない状態は不安に感じるかもしれません。ただ裏を返せば、レイアウトをゼロから設計できるということでもあります。
sinsiaはここを選び、ブランドの世界観に合わせて空間をつくる道を選びました。
前のテナントが飲食店だった、という幸運
居抜きやスケルトンの区画を見るとき、意外と大事なのが「前に何が入っていたか」です。
飲食店跡は、シャンプーブースの自由度が高い
飲食店だった区画には、厨房用の給排水設備が確保されています。そのため、シャンプーブースの位置を後から自由に決めやすいのです。
sinsiaの店舗でも、入口からシャンプーブースまで段差のないフラットな動線を実現できました。ご年配のお客様からも喜ばれているそうです。
床上げが必要な区画は、段差が生まれる
反対に、床上げ工事が必要な区画では段差ができます。車椅子やベビーカーでの来店に制約が出てしまう。
図面を見る段階で、既存の排水位置と床の状況を確認しておく。これだけで、あとからの後悔がかなり減ります。
43坪から100坪へ。「隣が空く」情報が先に届く意味
最初に契約したのは、同じビル10階の約43坪でした。
「いつか100坪規模の旗艦店を」という構想はあったものの、実現はまだ何年も先だろう。そう考えていたそうです。
ところが数年後、隣の区画が退去することになり、優先的に声がかかりました。
結果として、想定より2〜3年早く拡張が実現しています。
増床は、移転よりリスクが小さい
- 移転しないので、お客様が離れない
- 工事の範囲が限られるため、費用も読みやすい
- 営業を続けながら進められる場合もある
ただし、こうした情報が一般募集に出ることはほとんどありません。貸主や管理会社とのつながりがなければ、そもそも耳に入らないのです。
「借りた後に、どんな情報が入ってくるか」まで考えて出店先を選ぶ。多店舗化を目指す方ほど、意識しておきたい視点です。
「条件に合う物件が出てこない」という段階でもご相談ください。
サロン不動産ネットでは、募集前の情報も含めてサロン向け物件をご紹介しています。
物件・お金・内装を、バラバラに進めない
出店時のトラブルの多くは、物件契約・資金調達・内装工事の3つが別々に進むことで起こります。
- 契約日は決まったのに、融資の実行が間に合わない
- 設計が固まらず、工事費が読めないまま契約を迫られる
- 物件側と内装側の言い分が食い違い、オーナーが板挟みになる
sinsiaのケースでは、物件の紹介と賃貸借の調整をBGパートナーズが、内装をグループの内装工事会社が担当しました。
不動産と建築、どちらも専門知識が必要な領域です。オーナーが間に立って調整する必要がなかったことで、工期も予定どおりに収まっています。
工事の遅れや「完成イメージが違う」というトラブルも覚悟していたそうですが、実際には細かい要望まで反映されたといいます。
資金の組み立て方には、複数の選択肢がある
出店資金の組み立て方は、ひとつではありません。
自己資金、融資、そしてサブリース型(店舗まるごとリース)という方法があります。サブリース型は、事業者が物件を借り、それをサロンに転貸する仕組みです。
① 申し込める物件の範囲が広がる
貸主から見た借り手が実績のある法人になるため、これまで検討対象にもならなかった区画に手が届くようになります。
② 手元にお金が残る
保証金や内装費を一度に用意しなくて済みます。オープン直後に必要な採用費・広告費・突発的な修繕費にも余裕を持って対応できます。
自己資金・融資・サブリース。どれが正解ということはなく、そのときの資金状況と物件のスピード感で選ぶものです。理想の物件に手が届かない理由が「与信」と「初期費用」にあるなら、サブリース型も一度検討してみる価値があります。
この事例から持ち帰れること
- 一等地で候補が出ないのは、条件ではなく与信と情報経路の問題であることが多い
- 紹介から内見、判断までのスピードが、そのまま取得できるかどうかにつながる
- 前のテナントの用途と設備の位置は、サロンの動線設計を大きく左右する
- 拡張余地のあるビルを選べば、移転ではなく「増床」という選択肢が生まれる
- 物件・資金・内装の窓口を分散させないほど、工期も費用もブレにくくなる
- 資金の組み立ては自己資金・融資・サブリースから、物件のスピード感に合わせて選ぶ
よくある質問
Q. 独立したばかりでも、一等地の美容室物件は借りられますか?
A. ご自身の名義で直接契約する場合は、事業年数や決算内容が判断材料になるため、難しいケースが多いのが実情です。ただし、事業者が契約者となるサブリース型の出店支援を使えば、個人や設立間もない法人でも一等地の区画に申し込める場合があります。
Q. スケルトン物件と居抜き物件、美容室にはどちらが向いていますか?
A. 内装費を抑えたいなら居抜き、世界観を作り込みたいならスケルトンです。ただし美容室の場合は給排水の位置が動線を大きく左右します。前テナントが飲食店だった区画は、シャンプーブースの位置を自由に決めやすい傾向があります。
あわせて読みたい
物件をお探しの方へ
サロン不動産ネットでは、一般には公開されていない募集前の情報も含めて、美容室・エステサロン向けのテナント・居抜き物件をご紹介しています。
「一等地は無理だと思っている」「条件に合う物件が出てこない」という段階でも構いません。ご希望のエリアや坪数をお聞かせいただければ、条件に合う物件が出たタイミングでご連絡します。
本記事は、BGパートナーズのオウンドメディア「サロンまるごとサポート」に掲載されたインタビューをもとに、物件選定の観点から編集部が再構成したものです。ご本人の言葉によるインタビュー全文は、下記の元記事でお読みいただけます。
インタビュー全文:髪質改善専門サロン sinsia 代表 日野達也氏(サロンまるごとサポート)

